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【SS合同企画作品】冬が来るその前に

第10章 Happy Birthday!!


彼の好きなとこ…スラリと背が高い所。ふわっとした柔らかい髪の毛。
意地っ張りで強がりツンとした口調も、そんな彼の魅力の一つ。
つまりは…全部が大好きな私は重症なんだと思う。
(今日は一緒に帰る約束をしたんだけどな…)
忘れられてるような気がしてほんの少しの不安を抱えたまま体育館入り口で彼を待っていると、
体育館のスライド式ドアが勢いよく開かれた。
練習を終えてバレー部がガヤガヤと出てくる。
「中に入って来れば良かったのに。」
私の姿に気付いた3年生の菅原さんが苦笑いを浮かべた。
「練習の邪魔になると悪いんで。」
「コート脇で見学してくれるなら大丈夫なんだけどね。」
「じゃあ、今度はお邪魔します。」
私と菅原さんのそんなやり取りを見て、彼は不機嫌そうな表情をした。
「アンタ何してるの?」
「一緒に帰ろうと思って待ってた。」
彼の姿を見るだけで一人テンションが上がっちゃう私はどうかしてる。
「ふ〜ん…」
1人で先を行く蛍の後ろ姿に少しだけ胸がチクっとする。
その後を追うように他の部員に声を掛けて私は急いで駆け出した。
「ねぇ…怒ってるの?」
私の頭上にある彼の横顔は不機嫌な表情を浮かべている。
「あのね…ケーキが美味しいカフェを見つけたんだ。少しだけ寄り道して行かない?」
ショートケーキが好きな蛍の為に調べたカフェは帰り道にある。
彼の誕生日に少しでも長く一緒に過ごしたくて誘ったのに…蛍は何も言わない。
トボトボと蛍の少し後ろを歩いていると急に彼が振り返った。
少しだけ頬を染めた蛍が私に手を差し出した。
「カフェに行くんデショ。」
さっきまで沈んでいた気持ちが一気に急浮上するなんて自分でも笑える。
差し出された彼の手にそっと手を重ねると、蛍は少し乱暴に手を繋ぎ直した。
お目当のカフェ。店内は小さな雑貨屋さんのような可愛らしい雰囲気。
席に案内されると、蛍は迷うことなく2人分のケーキと飲み物を注文した。
横目でチラっと私を見た彼に笑顔を向けると、蛍は直ぐにそっぽを向いた。
暫くして運ばれてきたケーキにフォークを入れて掬い上げる。
その手を蛍につかまれて、私の口の中の入るはずだったケーキは彼の口の中へ。
「僕の誕生日に他の男に笑ったバツ。」
余り見せることのないヤキモチに私は嬉しくなる。
「お誕生日おめでとう。」
彼はほんの少しだけ表情を柔らかくした。



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