第10章 Happy Birthday!!
「寒ぃ…寒ぃ……寒い。」
さっきからずっと日直日誌にペンを走らせてる。
背後に回り込んでオレは背凭れとの間に無理やり入り込んだ。
「ちょ!キヨ!!」
「2人でも座れんだろ。」
の細い腰にしがみつくように腕を回すと、その小さな背中からの体温が伝わってくる。
窓の外では乾いた風がヒューっと高い音を立てている。
「未だ終わらねぇの?」
「もう少し。」
久しぶりのオフでしかもオレの誕生日だってんだから、色んな事を期待してしまうオレは悪くないはず。
パタン…と日誌を閉じた音が2人きりの教室に響いた。
スッ…と立ち上がったの腕を掴んで引き寄せると、バランスを崩したはオレの膝の上に座った。
オレには好都合。の腰に腕を回して逃げ出さないようにホールドする。
「なぁ…今日何の日か知ってるだろ?」
「知ってるよ。」
「彼氏様の誕生日なのに冷たくね?」
「冷たいって、そんな事ないでしょ!」
「じゃあ、キスしたい。“18”になって未だしてない。」
「ココ教室!」
が思いっきり肩を叩く…と言うオレの予想通りは手を振りかざした。
その手を振り下ろすと同時にオレは掴み止める。
グイっと引き抜こうとするの腕をさらにぎゅっと握る。
顔を真っ赤にするが可愛い。
「キス…だけじゃねぇけど。他にもしたい事あるんだけど、どうする?」
眉根を寄せて眉間に皺を作る。
抗議の視線を寄越してるつもりだろうが、その瞳が潤んでるもんだからオレは更にイジメたくなる。
ここいらで止めとかないとお姫様の機嫌を損ねたんじゃせっかくの誕生日が台無しになる。
「ほら、日誌出して帰るぞ。ウチ寄ってくだろ?」
ポンポンと頭に手を置くとは小さな声で返事をした。
オレの膝から立ち上がるとカバンの中から何かを取り出した。
ふわっとした肌触りの物が首に掛かった。
「寒がりなキヨに。お誕生日おめでとう。」
マフラーを持つ手を離しそうにないを真っ直ぐ見つめる。
視界からの顔が消えたと同時に、唇に柔らかいものが重ねられた。
「キスしたいのはキヨだけじゃないんだから。」
の照れ笑いがオレの胸を温かくした。