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【SS合同企画作品】冬が来るその前に

第10章 Happy Birthday!!


パタパタパタ…
放課後の教室に2人きり。
誰かが廊下を走る音が響く。
部活に行こうとしたらジャケットの裾を引っ張られた。
その衝撃に顔だけで振り返ると、そこにはほっぺを赤く染めたチャンが居た。
「ご…ごめん。」
ジャケットの裾を握っていた手は直ぐに引っ込められた。
「どーした?」
俺よりもずっと低い位置にある瞳。
ソレを覗き込むようにして顔を近付けると、チャンはますます顔を俯けた。
机に寄りかかるように少しだけ腰掛ける。
コレでやっと揃う俺とチャンの目線…それでも俺の方が少し高い。
肩から提げたエナメルバッグが重くて、その重量から逃れたい俺は隣の席の人の椅子の上にバッグを置いた。
腕時計を確認する…練習開始まで後10分。
サボる訳じゃないのに何故かこの時間になると夜久サンが俺を迎えに来る。
「は…灰羽君。」
「はーい。」
「そ…そのっ…今日…お誕生日だって聞いたから。」
「うん。俺16サイにナリマシタ。」
後手に何かを隠すようにして立っていたチャンが俺の目の前に何かを差し出してきた。
「お誕生日おめでとう。」
「あ!プレゼントっ?!」
コクン…顔を真っ赤にして頷いたチャンの手から、綺麗に包装されたプレゼントを受け取った。
「開けても良い?」
「うん…」
和紙のような手触りの柔らかい包装紙の中から出て来たのはスポーツタオルだった。
「タオル!やった!!」
「ごめんね。灰羽君バレー部だからタオルしか思いつかなくて。」
「なんでなんで!スゲー嬉しい!ありがとう!」
俺はホントに嬉しくて、チャンに思わず抱きついた。
「…ったく…リエーフの奴…」
そこに聞こえてきた怖い先輩の声。
多分、直ぐそこまで来てる。
俺はチャンの手を引いて窓際のカーテンの中に隠れた。
俺の名前を呼ぼうとしたチャンの唇の前に人差し指を立てた。
「シッ…」
ドキン…ドキン…
近距離で見つめ合っているせいか、ジャケットの裾を引っ張られた時よりドキドキしている。
夜久サンの足音が遠ざかっても俺はカーテンに包まったままチャンと見つめ合っていた。
「俺の事…好き?」
ゆっくりと頷いたチャンの顔は首まで真っ赤になっていた。
「俺も大好き。」
俺の誕生日は2人の記念日になった。
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