第7章 文化祭scramble!!
秀徳高校。
名前を聞いた事はあるが実際に来た事はなかった。
“文武両道”を描いたような学校なのだと噂で聞いた事があるくらい。
スポーツ部も文化部も全国大会の常連校として名前を連ねる事も珍しくない。
俺ら音駒とは一度も当たった事はねぇけど。
「夜久サン、夜久サン!どんなとこですかねー。」
「試合しに行く訳じゃねぇんだから、ちょっと落ち着け。」
リエーフはさっきからソワソワし過ぎだし。
少しだけ先を行く黒尾と研磨が何を話しているかは聞こえない。
都内にあるにも関わらず、閑静な場所に佇むその校舎。
正門前で研磨が足を止め、その視線の先にはセーラー服姿の女子の姿。
「研磨!!」
噂の…幼馴染み。研磨がずっと片思いをしている幼馴染みだというコトは
黒尾がコッソリ教えてくれた。ハッキリ言って可愛い。
「夜久サン、可愛いですね。」
リエーフが珍しく声を潜めた。
「初めまして。研磨と幼馴染みのです。」
研磨と幼馴染みと言うその子は丁寧に会釈をした。
「はっ…初めまして。夜久です。」
彼女に見惚れて自己紹介を忘れていた。
だけど、彼女に見惚れていたのは俺だけじゃない。
リエーフもそれは同じで、慌てて自己紹介をした所為で何時もより声が大きくなった。
「おっ…俺は灰羽リエーフ!!!」
「うるせー!リエーフ!」
脚に1発蹴りを入れるとリエーフは抗議の眼差しを向けてきた。
いつも通りのやり取りの中、彼女が研磨の手を取った。
「あー!!!研磨サンずるい!!」
「うるせー!リエーフ!」
先程と寸分も変わらないやり取りに黒尾からのツッコミが入る。
「お前たちがな?」
性懲りも無く声が大きいリエーフに溜め息を吐く。
そんな俺達のいつも通りの様子を見てあの子は楽しそうに笑う。
あの子が研磨を見つめる度に。
俺の胸は何だかモヤっとする。
研磨と繋いでる手を見ると…
なんだかモヤっとする。
このモヤっとする感情が何なのかなんてコトは予想出来るけど。
会ったばかりの相手にこんな感情を持つのも早すぎる気がする。
何よりも気になるのは…
黒尾の横顔。
あの子に恋をしているのは研磨だけじゃねぇな。
黒尾も…
そして恐らくはリエーフも。
そして俺はもう一度溜め息を吐いた。