第10章 テスト
『会いたいっスーー!
o(T△T=T△T)o』
まるで泣き声が聞こえてきそうなほど、分かりやすくて切実なメッセージに、結は思わず頭を抱えた。
(スマホの向こうで暴れてる……)
嬉しくないわけではない。
ただ、画面の向こうから会いたい電波を飛ばしてくる恋人は、いま中間考査の真っ最中。
お世辞にも成績がいいとは言えない彼の、勉強の邪魔をするわけにはいかない。
『テスト期間中ですよね?』
ふと顔を向けた廊下の窓から見える景色は曇り空。
あえて短い返事を送った結の携帯は、だがすぐに応答のサインを光らせた。
嫌な予感を抱きながら指先で小さくタップした結の目に飛び込んできたのは、彼らしいみえみえのメッセージ。
『じゃあ
分かんないとこあるから
教えてщ(゜▽゜щ)』
「ぷ。じゃあって一体……」
「あ〜もう。そのニヤけた顔やめてくんない?」
「ム、ニヤけてなんか」
結はいつものように友人にからかわれながら、次の授業が行われる教室へと足を向けた。