第8章 コール
大きな窓に掛けられた濃いブラウンのカーテンが、睡眠に最適な空間を演出するように朝の光をほどよく遮断。
だが、わずかに開いたその隙間から細く差しこむ光の筋が、時間の経過とともにじわりと動き、深い眠りについている結の顔を照らしはじめた。
「ン、まぶ、し……」
まだ瞼が重い。
朦朧とする意識の中、結は今の状況を把握しようと眠い目をこすった。
昨日は、一人暮らしの友人の家に泊まる予定だったはずなのに、身体を包むのはしなやかなバスローブと、寝心地のいい大きなベッド。
そして、鼻先が触れそうな距離には、お揃いのバスローブを羽織った黄瀬が、枕にその顔を半分うずめて穏やかな寝息を立てている。
綺麗な顔に見とれること数秒。
「……あ」
首の下の硬い感触が、ようやく彼の腕だと気づく。
睡眠と快楽を繰り返した甘い夜の記憶に、結は言葉をなくして頬を赤く染めた。
『も……ダ、メっ』
『なんで、気持ちよくない?』
『っ、気持ち……いけど、ゃあ』
『もっと、オレに……結のいいとこ見せて』
『ああぁっ、涼太、りょ、た……ぁっ』
それは濃密すぎる夜だった。
黄瀬の迸る激情が、限界を探るように何度も身体を貫いて暴れた。
自分の乱れた姿と、意識を飛ばすほどの浮遊感が徐々によみがえり、結は布団を頭から被ってひとり、羞恥に身を震わせた。