第7章 リミッター
「あ〜ぁ、離したくないな……ホントは」
タイムリミットを告げるデジタル時計の数字に溜め息をひとつ。
黄瀬は名残を惜しむように、結を腕の中に閉じ込めた。
「あ、あれ?そういえば、まだ言ってませんでした……よね」
「ん。ナ〜ニ?」
「今日はお泊まり……できるんです、けど」
「へ」
「もともと今日は友達の家に泊まる予定だったんです。でも、都合が悪いなら帰り」「ちょ、ちょっと待ったあぁーー!」
目を丸くして言葉を遮る黄瀬に、結はたくましい腕の中で肩を揺らした。
「ナニそれ!帰すわけないじゃないスか!てか、もっと早く言ってくれれば良かったのに!」
「ム。だって、そんな暇なかったじゃないですか」
不満げに口を尖らせて、背中を向けてしまった恋人に、イケメンの鼻の下がだらしなく伸びる。
(あ〜もう、照れちゃって)
出逢った頃は無口でクールな印象だった彼女が、次々と見せてくれる喜怒哀楽。
たまらない気持ちになる瞬間だ。
掠れた声も、やわらかい膨らみも、秘めた場所の熱も、知っているのは自分だけ。
(オレしか知らない、オレだけの……)
乱れた姿を思いだして、下半身がズクリと疼く。
「結。こっち向いて」
「や」
(だから、その声は反則だって)
若い肉体が素直に反応してしまうのは自然のセツリ。
意味も知らない言葉で自分を擁護しながら、黄瀬は両腕を結の腰に巻きつけた。
「煽った結が悪いんスよ」
「は?煽ってなんか……」
「まさかこのまま寝かせてもらえるなんて思ってないよね?甘いなぁ、結は」
そういうことなら話は別、むしろ夜はこれからだ。
「え、何……どういうこと、あっ」
バスローブの合わせから潜りこませた手で胸を揉みこむと、すぐに反応して尖る先端を指で弾く。
「もっと、オレには上があるって……教えてあげよっか?」
「……っ」
「時間はたっぷりあるし、ね」
「さっきの子犬は一体どこに……ン、んっ」
眉間にシワを寄せる恋人を軽々と自分の下に組み敷くと、黄瀬はやわらかな唇に噛みついた。
「犬の先祖って狼っしょ?もう諦めてオレに食べられて」
強引に侵入してくる舌に口腔を食い尽くされて、結はなすすべもなく恋人の手に堕ちていった。
end