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【黒バス】今夜もアイシテル

第53章 ファイナル



自由奔放なプレイと、型のないバスケスタイルから、ディフェンス不可能の点取り屋『アンストッパブルスコアラー』の名を欲しいままに、コートの上で圧倒的な存在感を放つ青峰大輝。

天性のスピードとストバス仕込みのハンドリングテクニックに加え、他に類をみないアジリティを発揮するための恵まれた身体をも持ち合わせた彼は、まさにバスケットボール選手として究極の域にある天才だ。



一方、青峰にも劣らない運動神経と身体能力を持ち、他人のプレイを一目見ただけでコピーしてみせるだけではなく、さらに完成度を高めて自分のものにすることから、『進化する天才』と評されて久しい黄瀬涼太。

今や、キセキの世代の技を体現することにも成功した彼は、無限の可能性を秘めた天才と言えるだろう。





「アンタには感謝してるんスよ。ホント」

「ハ、そんな世間話してる余裕あんのかよ。黄瀬」

目の前で腕を大きく広げ、青い閃光をビリビリと放つかつてのチームメートの背中を、追いかけるのをやめたのは二年前の夏。

勝利を掴むために足りなかったあと一歩を、今日こそ必ず乗り越えてみせる。

「あの時の借りは、キッチリお返しするんで!」

「!?」

おそらく高校最高レベルの身体能力を誇る青峰の身体が、黄瀬の動きにつられて左右に振れたかと思うと、バランスを崩して踵が床から浮き上がる。

それは赤司のアンクルブレイク。

「チッ、ふざけんなよ!黄瀬っ!」

だが、さすがにコートに手をつくこともなく、すかさず体勢を立て直した青峰の横を、黄瀬は地響きのような音を立てながら一瞬で抜き去った。





「なっ、あれって無冠の五将の『雷獣』か!?」

「いや、それだけじゃない。見たか、笠松。あのスピードとクイックネス……あれって」

「俺にあんなスピードは出せねーけどな」

笠松は、両隣で興奮した様子を隠せない森山と小堀に冷静な言葉を返しながらも、膝に置いた拳を強く握りしめた。

「いけーーっ!黄瀬ーーっ!笠松!お前ももっと声出せ!!」

「水原センパイ。ちょっと落ち着いてください」

「これが落ち着いていられるかっ!」

小堀の隣で誰よりも声を嗄らし、声援を送りつづけている翔に苦笑いを返すと、笠松は、生意気だった新入生の成長した姿を──そして彼が率いるチームの戦いを、固唾を飲んで見守った。




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