第52章 ビトウィーン・ザ・シーツ

「あ、違うよ！別に変な意味で言ったんじゃなくて……私だって、さすがに外はちょっと恥ずかしい……し」

顔の前でぱたぱたと手を振って、言い訳を繰り返す恋人に、募る想いがキャパシティを一気に超えて、胸を熱く満たしていく。

「外じゃなきゃいい、のか？」

「え」

「てか、見せるわけねーけどな」

「……翔、くん？」





キスの最中、彼女がどんなに蕩けた顔をしているのか

唇が離れた後、伏せられたまつ毛の下の瞳がどんな風に艷めくのか

誰にも、たとえ一秒だって見せるつもりはない。

「予定より早いけど、そろそろホテル……チェックインしねーか？」

喧騒を消し去る一瞬の間。

「……うん。私も早くふたりっきりになりたい、デス」

前言撤回。

今すぐにキスしたい。

聖なる木なんてなくても、この唇も、寄り添ってくる身体も全部、俺で埋め尽くしたい。

「……好きだ」

「私、も」

大好き……と形を成す前に、やわらかい唇に指を押し当てたのは、可愛い声もひとり占めしたいから。

こんな独占欲も、焦がれる気持ちも、彼女に伝えるには一晩じゃとても足りない。

（やっぱ誰にも見せたくねーな）

肩を抱く手に力を込めると、パーク内の賑わいには目もくれず、俺は人波を掻き分けながら退園ゲートをまっすぐに目指した。





水原翔 with 宿り木





Happy Merry Christmas！