第52章 ビトウィーン・ザ・シーツ
ポタリ
頬を伝い、尖った顎の先でカタチになった汗の粒が、こぼれ落ちて私の肌を濡らす。
「ん、ンっ」
だがそれは、細い布で覆われた視界の中に浮かぶ、過去の残像。
おかしくなってしまいそう、なのに。
「っ、結……だいじょーぶ?」
荒い息の下で気遣ってくれる声にコクリと頷くと、両足を大きく持ち上げられて息が止まる。
「ひゃ……っ、ん」
「じゃ、も……ちょっと付き合ってくれる?せっかくのプレゼント、もっと味わいたいんスよ」
さらに深く繋がろうとする腰に、下半身がベッドから浮く。
「う、わっ。こんな咥えこんで……結も見てみる?なら取ってあげるっスよ、この目隠し」
『もーひとつ、欲しいモノがあるんスけど』
甘えた声でオネダリされて、目を逸らしたのが運のつき。
首からネクタイを引き抜き、口に咥えてジリジリと距離を詰めてくる姿は、忠犬でも番犬でもない、野生のオオカミ。
怖かったら言って、と唇をちろりと舐める彼の言葉は、矛盾していると頭では分かっているのに。
妖しく光る瞳を目の奥に焼きつけながら、私の世界は暗闇につつまれた。
遮られた視界のせいで、いつ、どこに落ちるのか分からない愛撫が、こんなにも快感をもたらすなんて知らなかった。
「ハッ、いつもより気持ちよさそうっスね。ココも、こんなに尖らせて」
「や、あぁ……ン」
規則正しい律動の合間をぬって、絶妙なタッチで触れてくる指に頭が白く弾け──翔ぶ。
「またイったんスか?ヒクついて、スゲェ締ま、る」
まだ絞りつくそうとする貪欲さが恥ずかしくて、思わず噛みしめた唇に降るキスは熱く。
「コラ。切れちゃうからダメっスよ」
「だって……も、気持ち、よすぎ……て、あぁっ!」
優しい声に気を取られていると、音を立てて叩きつけてくる腰がそのスピードをあげる。
律動の激しさに耐えかねて、わずかにズレたネクタイの隙間から見えるのは、今まさに高みに登りつめようとノドを鳴らす、私だけの頂きの景色。
「りょ……た、ぁっ」
「く、イク、っ……結、っ」
チカチカと目に浮かぶ色とりどりの光は、街中に溢れるイルミネーションよりもまばゆくて。
歓喜の声を上げながら、私はその輝きに身をゆだねた。
黄瀬涼太 with イルミネーション
end……?