第48章 オンリーワン
「ちょっと涼太。結ちゃんは?」
挨拶もなく玄関の扉が閉まる音に、違和感を感じたのだろう。
廊下へと続くドアを開けた黄瀬は、二階から降りてくる母親の怪訝そうな顔からついと目を逸らした。
「一体どうしたの……アンタ、まさか」
女の勘は侮れない。
だが、その棘のある声に、今は構っている余裕はなかった。
「……家まで送って、くる」
「……」
それ以上追及しようとしないのは、自分にも責任の一端があるという負い目なのか、それとも。
(今はこんな冷静に考えられんのに……なんで、あんな……あんなコト)
彼女がひとりで出ていったことを物語るように、鍵のかかっていない扉が目の前に高くそびえ立つ。
黄瀬は、腕をのろのろと伸ばすと、ズシリと重い扉に手をかけた。