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【黒バス】今夜もアイシテル

第48章 オンリーワン




「痛、ッ」

その時、足に走る痛みに小さく呻くと、黄瀬は派手な音とともにソファから転がり落ちた。

「っ、黄瀬さん!?」

パタパタと駆け寄ってくる足音だけで、幸せが細胞を満たしていく。だからといって、痛みが引くわけではないのだが。

「あ、足……つった」

「ゆっくりでいいので、仰向けになれますか」

「ウ、ン。いてて」

つま先を持ち、痙攣したふくらはぎの筋肉を伸ばす手に、つい呼吸が止まる。

「く」

「息、止めないで。身体に力が入ると痛みがひどくなるんです。ゆっくり吸って……吐いて」

冷静な声に応えるように、黄瀬は大きく息を吸いこんだ。

「何か手伝えることある?」「じゃあ、スポーツドリンクがあればお願いできますか」という女性陣の連携プレーを聞きながら、少しずつ和らいでいく痛みに息を吐く。

「ふぅ。ちょっと治まってきた、かも」

「良かった……あ、駄目ですよ、まだ起きあがったら」

コレ、借りますねとソファにあったクッションを手に、頭を持ち上げようと身を屈める彼女の白い襟から、シャラリとこぼれるペンダントトップが頬をくすぐる。

次の贈り物はもう決めてある。

彼女と離れる?そんなことは考えたこともないし、考えられない。

むしろ──

「結」

「まだ痛いですか?」

『でも』の続きは、今度じっくり身体に聞くことにしよう。

でも、お互いどんな道を選んだとしても

たとえ物理的に離れる日が訪れたとしても

(オレが帰る場所は、ひとつだけ)

「好きっスよ」

「!?」

テキパキと処置していた手を止めて、狼狽える恋人の隙をつくように唇にキス。

「も……っ、何して!」

真っ赤な顔で怒る姿も、小さな身体に秘めた芯の強さも、ベッドで乱れるしなやかな身体も。

(あぁ、ホント好き)

「へへ。ゴメン、つい」

「ついじゃないですよ、もう……」

ドリンクを渡した後、いつの間にか姿を消した母親。これは、今がそのタイミングだという神さまのお告げかもしれない。

(あんな可愛いこと言われたら、ウィンターカップが終わるまで待てないっての)

「ね、高校卒業したらさ……」

彼女のリアクションはいつも想定外。今日はどんな表情を披露してくれるのだろう。

先の読めない未来に、黄瀬は胸を膨らませた。





Happy end

→another √
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