第44章 フェスティバル
オトコを煽ったらどんな結果が待っているのか、無自覚の恋人にはカラダで教える必要がありそうだ。
「今日はオレの部屋連れてくの決定、ね。さっきの返事はそこで聞かせて」
「……え、そ、そんな一方的な」
「結に拒否権ないから」と封じた唇のやわらかさに、ふたたび溺れていく快感に身をまかせる。
角度を変えて触れるたびに、蕾がほころぶように応えはじめる唇を、黄瀬は焦らすように何度も啄んだ。
「ん、黄瀬さ……っ」
「もっと……オレの中に来て。全部、結のモンだから」
身体を折り曲げながら深く絡ませた唇の隙間から、遠慮がちに入ってくる舌をキツく吸い上げる。
「ん……っ」
「ハッ、結……」
「あっ、んん……涼、太っ」
クラスメイトからの呼び出しらしい振動に無視を決めこむと、口の端からこぼれ落ちる吐息ごと奪うように、激しいくちづけを繰り返す。
「りょー……た、も……お願い」
「ダメっスよ、まだ全然足りない。もっと……ハッ、もっとちょーだい」
あまり好きではない口紅の味も、結だけは特別だ。
唇に艶を与えるほのかな口紅を、黄瀬は自分の唇で剥ぎ取るように吸いつくした。
「ん……ふぁ、っ」
「全部、オレのモン……だから」
ソクバクするコが苦手だと言ったのは、あながち嘘ではなかったが、まさか自分がこんな気持ちになる日が来るとは思わなかった。
束縛
独占欲
なんて甘く、抗いがたい誘惑だろう。
「ね、結……オレのこと、スキ?」
「……う、ん。好き、大好き」
「オレも……すっげ好き」
こんなにも夢中になれるモノが見つかるなんて、人生捨てたもんじゃない。
少し寂しくもある最後の海常祭は、きっと忘れられない思い出になるだろう。
腕の中の身体を強く抱きしめながら、黄瀬は色をなくした唇に飽きることのないキスを浴びせ続けた。
end