第43章 ミッション
黄瀬涼太 18歳
バスケ界において、十年に一人の天才との呼び声が高い『キセキの世代』のひとり。
モデルとしても全国区の人気を博す彼のプロフィールは、バラエティに富んでいた。
家族構成:父・母・姉ふたり
誕生日:6月18日(双子座)
血液型:A型
ポジション:SF(スモールフォワード)
好きな食べ物:オニオングラタンスープ
嫌いな食べ物:うなぎ
嫌いなもの:ミミズ
特技:利きミネラルウォーター
趣味:カラオケ
好きな女性のタイプ:ソクバクしない子
ちなみに、最後の項目については、昔雑誌のインタビューであまり深く考えずに答えたことらしいというのは、ファンの間では有名な話。
そして今、『何事にも前向きで一生懸命な子』に夢中な黄瀬の悩みは、まさにそれに起因していた。
「黒子っち。なんかオススメの映画ないっスか?出来れば癒し系のヤツがいいんスけど」
『めずらしいですね。黄瀬君がそんなことを言うなんて……ああ、水原さん絡みですか』
「な、なんで分かったんスか!?」
電話越しにもかかわらず、一瞬で心理を読みとる中学からの親友に、黄瀬は前髪をクシャリとかきむしった。
もっとも、親友だと認識しているのは一方通行のようだが、基本物事を深く考えることのない彼にとって、それはさして重要ではない。
『黄瀬君はともかく、水原さんのことは心配ですね。小さな劇場でもよければ、お勧めできそうなものがありますよ』
「何気に酷いこと言われてる気がするのは……」
『気のせいじゃないですよ』
「ヒドッ!」
こうして話していると、まるで中学の頃に戻ったような気がする。
『ネタバレしたくないので内容は伏せますが、きっといいリフレッシュになると思います』
「ありがと、黒子っち。今度シェイクおごるっス!」
『期待しないで待ってます』
いずれ高校を卒業して、それぞれ違う道を歩みだしたとしても、あの頃の仲間達とはいつまでも繋がっていられるはず──そんな感傷に耽りながら通話を終えると、黄瀬はベッドに寝転んだ。
聞いたばかりの作品名を検索しながら、散歩を待ちわびる犬のように長い脚がパタパタと揺れた。