第42章 ファウル
「結、シャワーの温度どう?もっと熱くした方がいいスか?」
「ん。大丈夫、です……」
ほどよく温かいシャワーを頭から浴びながら、黄瀬はまだ朦朧とする思考の中で、床に落ちそうになる水着を引っ張りあげた。
海を思い出させる深い青緑をベースに、白と黄の細いラインがウエストに入った水着は、今夜の思い出とともに一年間眠ることになるのだろう。
(ふぅ、危なかったっスわ……)
オーラルセックスは、するのもされるのもあまり好きそうではなかった彼女が、こんな風に求めてくれたことは素直に嬉しかった。
だが、さすがに口に出してしまうのはまだ抵抗があった。
足元にうずくまって自分のモノをくわえる淫らな姿が、まだ網膜をチリチリと焦がす。
頭を押さえつけ、腰を振りそうになるオトコの本能を抑えた自分に、いつか神さまがご褒美をくれるはず。
(あぁ……でも気持ちよすぎて、ちょっとクセになりそ)
キレイになった髪を撫で、ほんの少しの後悔の念とともに、心地いい倦怠感と胸を満たす幸せを味わう。
「だいじょーぶ?口の中、気持ち悪くないっスか?」
「ん。そんなこと……平気、です。最後まで、その……シて、あげられたことなかったから、よかった……」
スリスリと胸に鼻を擦りつける彼女は、まだ興奮覚めやらぬ様子でおとなしく腕に抱かれたまま。
「ありがと、結。スゲェ気持ちよかったっスよ」
「でも、涼太の……欲しかった、のに」
「へ」
「今度は……ちょ、だい……ね」
「!? ちょっ、結!それ一発退場の反則っスよ!」
シャワーでほんのりと曇る空気を切り裂くように、黄瀬の悲痛な声が響き渡った。