第37章 ホーム
腰が砕けてしまいそうな衝撃に、結の頭は白く弾けた。
「は……っ」
身体を埋めつくす熱に大きく喘いだ後、不足する空気を取り込もうと喉を大きく反らせる。
「……大丈夫、か?」
「は、ぁ……木吉さ、……ん」
「ゆっくり、息を吸って……」
飛びそうな意識の中、唯一耳に触れる声に従って懸命に呼吸を整える。
「次は吐いて……そう、上手だ」
ぼやけた視界に映るのは、至近距離で見下ろしてくる心配そうな薄茶色の瞳。
優しく頬に触れてくれる手にも助けられながら、結は強ばる全身から少しずつ力を抜いた。
「……結」
名前を呼ぶその声に、胸が──心が震える。
彼が与えてくれる痛みすらこんなにも愛しい。
全身を満たす幸福感に耐えきれず、結の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。
「辛いよな、すまん」
気遣うように声をかける木吉の額に張りついた前髪を、結は伸ばした指先でそっと払った。
「辛くなんか、ない。嬉しい……の。木吉さんと、やっとひとつに……なれて」
濡れた頬を拭っていた指がピタリと止まる。
「そんな可愛いこと言うと、どうなるか……」
「ひ、あぁ……っ」
試すように突き上げられて、振り落とされないように全身でしがみつく。
「く、そんなに締めたら……俺の、我慢が」
「ダメ……我慢なんて、しないで……お願い」
無意識に絡めた足に、木吉が低い声で呻いた。
「今のは、結が……悪い。もう限界、だ。少し、動く……ぞ」
「あぁ、あっ!」
深くつながったまま、ゆっくりと動きはじめる身体の下で、思考も理性も溶けていく。
それが木吉にさらなる興奮をもたらすとは知らずに、結は侵入者をさらにギチギチと締めつけた。
「う、くっ……その締めつけ、やばい」
「……ふ、ぁっ」
大きくグラインドするような動きに、苦痛を感じたのは一瞬だった。
ゆったりと揺らされるたび、身体の奥で潤いを増す粘膜が、木吉の劣情を煽るように絡みつく。
「トロけてきた……結のナカ、すごく熱くて、溶けて……しまいそう、だ」
「ん、やぁ……あっ」
ナカで暴れはじめる硬い楔が、徐々に身体に馴染む感覚に戸惑いながら、結は手のひらの中のシーツをきつく握りしめた。