第37章 ホーム
「や、だ……そんなとこ、駄目……っ」
抱えた足を押し広げながら、内腿に、さらに奥へとたどろうとする頭を懸命に押し返す手にもう力はなく。
敏感な場所に触れるぬるりとした感覚に、結は閉じることも出来ない膝を震わせた。
「ひゃ、うっ」
「可愛いな……その声。もっとイジめたくなる」
周辺を入念に探る舌と執拗な愛撫に、ビクビクと痙攣する足がシーツを激しく乱す。
「ン、おかしく、な……ん、ああぁ、っ」
もどかしいほどの疼きがピークに達しようとする寸前で、動きを止める狡猾な指と唇。
足の間からのそりと顔をあげる木吉を、結は軽く睨みつけた。
「……意、地悪」
「はは、説教なら後でいくらでも聞くぞ」
そう言いながら、じりじりと這い上がる身体の重みでベッドが淫らに鳴る。
今日は彼に翻弄されてばかり。
勝負を諦め、そっと見あげた木吉の顔色が、ふと曇る。
「木吉……さん?」
「そういえば……あれから、海常には顔出してるのか?」
唐突に、だが問いかけるその声は真剣で。
「なんの、話……ですか?」
「いや、何でもない……」
朦朧とする意識の中で、結は胸の奥から湧き上がる感情を抑えながら言葉を選んだ。
「笠松さんの……三年生の皆さんが卒業する日に、送別会という名の追い出し会、があったんですけど」
「そ、うか……いや、悪い。ちょっと気になっただけだ。気にしないでくれ」
わずかに苦笑して、頬に唇をよせてくる木吉の頭を、結は両腕で抱きしめた。
「……行ってませんよ」
ハッと息をのむ気配に胸を痛めながら、彼の柔らかな髪に想いを込めて指を絡める。
「ずっと……何してても、頭の中は木吉さんでいっぱいなのに……気持ちの整理がつかない状態で顔を出せるほど、私は出来た人間じゃありません」
「……結」
甘えるように肩口に額をこすりつけてくる、汗ばんだ前髪がたまらなく愛しい。
「でも、海常は……やっぱり私にとって大切な場所です。また必要としてくれるのなら……行ってもいいでしょうか?」
ゆっくりと頭を起こした木吉の顔がくしゃりとゆがむ。
「私には木吉さん、だけ……」
「結……」
「……好き」
自然に引き合う唇が、深く、溶け合うように、お互いを求めて重なり合った。