第37章 ホーム
「キツいか?」
「ん、大丈夫……っ」
根元まで侵入した太い指が、狭い壁をこじ開けるように蠢くたび、跳ねるカラダが水面を激しく乱す。
「だいぶ柔らかくなってきたな。ナカ、うねって……特にココ」
「や……ぁ、やだっ!」
「気持ちいい……の間違いじゃないのか?腰、動いてるぞ」
「違っ……ん、うっ」
「一回、イッとくか?それとも」
探り当てた快感のポイントを突いていた動きを止めると、キュウキュウとねだるように波打つ襞が、まるで生き物のように指を締めつける。
「スゴいな……俺の指締めつけて、離さない」
「あ……っ、んん」
無意識に快感を貪ろうとうねる誘惑から、いったん退いた指がビリビリと痺れる。
くたりと身体を預けながら、何かを訴えるように見上げる瞳に、木吉はコクリと生唾を飲みこんだ。
「悪い。やっぱり結の初めては指じゃなくて、俺自身で味わいたい。いったん出るぞ」
「……え」
木吉は勢いよく浴槽から出ると、自力で立てなくなっている結のふらつく身体をバスタオルにくるみ、いとも簡単に抱き上げた。
「相変わらず軽いな……ていうか、少し痩せたか?結はもう少しちゃんと食べた方がいいな」
「こんな時に、お父さん……発言、ですか?」
「恋人として心配してるんだ」
照れくささを隠すように、むぅと膨れてみせる顔に優しく微笑みながら、木吉はベッドルームへ続く床に足跡を刻んだ。
「木吉さん、身体拭かないと……」
「いいんだ、どうせすぐに濡れるからな。そうだ、せっかくだからあの下着つけるか?」
「ム。却下……です」
「じゃ、次の楽しみに取っておくか。どうせすぐ脱がせるんだしな」
「……っ」
唖然とする口にキスをして、ゆっくりと身体を横たえたベッドが待ちかねていたように音を鳴らす。
「あ、の……電気、消して」
部屋の隅にのそりと立つスタンドライトの明かりは、控えめな淡いオレンジ。
だが、目と鼻の先にあるそれを消す時間すら今は惜しい。
なにより。
(全部見たい、結のすべてをこの目で)
お願い、と懇願する声も今の木吉には届かない。
「却下、だな」
驚きに見開かれた瞳にうつる、余裕のない自分の顔に苦笑すると、木吉はほどよく熟れた身体を組み敷いた。