第36章 アイテム
「可愛いオネダリ……最高のプレゼントかも。もっと、言ってくれる?」
欲に濡れた長い睫毛が、凛々しい目許に影を落とす。
「欲しい……涼太、が。早く、全部……ちょ、だい」
発情した猫のように鳴き声をあげる姿に、喉を掻きむしりたくなるような渇きが全身を襲う。
理性と劣情が交差する中、甘えるようにすりよってくる結の薄く開いた唇を、黄瀬はゆっくりと塞いだ。
縋るように肩に爪を立てる指が、チリチリと鈴の音に合わせて肌を焼く。
「結……っ」
「ん、ぁん…………っ!」
唇を深く重ねると同時に、欲望に任せて突き上げた腰を激しく揺らす。
「ん、んふ……ぅっ」
唾液で溢れる唇をほどき、赤いリボンに絡みつく金のネックレスをたどりながら、汗ばむ肌を愛撫する。
「涼……太、ぁ」
「スゲェ好き……結を全部、オレにくれる?」
「う、ん……私も、スキ……全部、あげる」
「ホント、に?」
こくこくと頷きながら、奥に引きずり込もうとする内襞は火傷しそうに熱く。
(気ぃ抜いたら、一瞬で持ってかれそうっスわ)
「じゃあさ……もいっこ、お願い聞いて?」
「な、ぁに……?」
「イク時、ニャアって鳴いて」
内側のピンクを親指で擦りながら、ズレた猫耳を元通りに直すと、あ然とする唇にネダるようなキスを落とす。
「イイ声で鳴けるまで、今日は離さないから」
──金輪際、ムダな誓いを立てるのはやめる
腕の中で爪をたてる黒猫に、じゃれつく大型犬の尻尾がパタパタと揺れる。
(桃っちに、お礼のメール送るべきかな。やっぱ)
「今年の誕生日プレゼントも……最高、っスね」
「まだ私渡してな、い……ん、あっ、ケーキも……ちゃんと、ひゃっ!」
「今はオレに集中して。ホラ、可愛く鳴いてみせてよ」
「そんなの無理っ……りょ、涼太……の、馬鹿っ!」
後で怒られる確率は五分五分……ではすまない予感。
そんな中、リビングに忘れてきた尻尾に、黄瀬はふと思いを馳せた。
(誰かが帰る前にちゃんと回収しとかないとな。でも、今は)
頑固な唇を攻略しながら、自分の下で少しずつ鳴きはじめる恋人を、黄瀬は満足するまで味わうことを心に誓った。
Happy birthday to Ryota Kise.
2016.6.18