第36章 アイテム
部屋の四隅に埋め込まれたダウンライト。
暖色系の明かりが、絡み合う二つの影を柔らかく包みこむ。
「ま……待って、ここじゃ駄目」
ここは家族がくつろぐリビングだ。
だが、背後から巻きつく腕に、分別も、抗う気力も奪われて、代わりに絶え間なく与えられる快楽に、結はなすすべもなく溺れていった。
「すげ……トロトロ」
刺激を求めて潤いを増す花びらを散らすように、出し入れされる指に蜜が滴り落ちる。
「……結。前、見て」
「ん、何……?」
L字型のソファの前、テーブルを挟んで存在感を放つテレビは、映画鑑賞が趣味の父親が選んだという大型スクリーン。
50……いや、60V型はあろうかという、その黒々とした画面にぼんやりと映るシルエットから、結はあわてて目を逸らせた。
「やっ」
胸をまさぐる手も、足の間を這う指も、まるで磨かれた鏡のように鮮明に映像化されて脳に伝わる気がしたからだ。
「今、ナカがキュッと締まった……見えないのに、想像しちゃった?」
「そ、んな……っ」
「いつか見せてあげるよ。結がどんな風にオレに抱かれてるのか……ね」
「や、あっ……ンんっ!」
埋められた指に細かい振動を送られて、ビクビクと浮きあげる腰が鎮まるのを待つと、黄瀬は自分のハーフパンツに手をかけた。
「ひとりでイったんスか?」
「……だって」
「結、もう少し腰あげて」
すでに固く張りつめて、勢いよく上を向いた屹立が、誘うように蜜を溢れさせる中心を擦りあげる。
「ひ、あ……ぁん」
「ホラ、しっかり上げてないと、このまま入っちゃうよ」
「や、駄目……っ」
ソファに手をついて、体勢をキープしようと反り返る背中は、まるでしなやかなネコのよう。
「ハッ……今、つけるから」
「あ、あっ……んん」
誓いに反し、ついポケットに押し込んでしまったゴムを着ける黄瀬の、荒い息に背中をなぶられて、ガクガクと震える腰に限界は近い。
「や、駄目……早く、涼太……っ」
「エロにゃんこ……たまんねっス」
細い腕を後ろから掴むと、黄瀬は装着を終えた昂りで一気に奥を貫いた。
「ん、んーー……っ!」
「キツ……っ」
待ちわびた熱に焼かれ、声にならない嬌声を上げながら、結の身体は大きく跳ねた。