第35章 デコレーション
ゆうべは、幾度声を嗄らしながら達したか分からない。
ベッドサイドで静かに時を刻む数は、木吉に解放されてからまだ数時間しか経っていないことを告げていた。
「木、吉さ……ぁ、ん」
「可愛いな、その声。俺を焚き付けたらどうなるか……もう忘れたのか?結は」
少しだけ強引で、執拗な愛撫。
彼の熱に反応するように慣らされた身体から、徐々に抗う力が抜けていく。
溺れていく細い指が、木吉のやわらかな髪に絡みつき、掻き乱す。
太股に押し付けられる欲情の証を受け入れようと、奥深くからジワリと染みだす蜜がシーツを濡らす感覚は、まるでデジャヴ。
「これで最後、か」
いつの間に手にしたのか。
ゴムを取り出した木吉が、空になった箱を床に無造作に投げ捨てた。
「だって、木吉さん……昨日、何回シたと思って……あ、っ」
「大丈夫だ。予備はまだあるから」
「そ、そんな心配してませんっ!」
覆い被さってくるたくましい背中が、筋肉をしならせながら臨戦体勢に入る。
「もっと結が欲しいんだ……駄目、か?」
優しい目をしたケモノに上から見下ろされて、結はのろのろと心の中で白旗をあげた。
「今日だけ……ですからね」
「腰が立たなくなっても、ちゃんと家まで送ってやるからな。心配しなくていいぞ」
「だから!そーいうことじゃなくて……ん、んぁっ!」
深く重なる唇と同時に、身体の中心を貫く楔から解放されるまで、あとどれくらいの時を要するのか。
ゆりかごのように心地よい快感の波に揺らされながら、結は夢中で目の前のたくましい首にしがみついた。
「ん……木吉さ、ん……好き。大好き」
うわ言のように『好き』を繰り返す恋人を、木吉は腕の中に強く閉じ込めた。
「結……今日だけ、壊してもいいか」
幸い夜明けはまだ来ない。
さらに乱れていくシーツの上、まだ受け取っていないプレゼントの代わりにと、木吉は思う存分甘い蜜を味わった。
Happy birthday to T.Kiyoshi.
2016.6.10