第31章 チェンジ!
薄暮に覆われた空に代わるように、チラチラと明かりを散らしはじめる街灯の光。
モノトーンの世界に満ちた部屋、濡れた肌に淡い陰影を浮かべながら、ふたりは蜜のように甘い時を過ごした。
『……結、ココ好きだよね』
真綿に触れるような指先に溺れながら、穏やかな波に幾度も揺らされて。
『あ、んぁ……アっ』
『気持ちい?』
耳に溶ける低い声と熱い吐息。
自然と腰が揺れるのは、目の前の快感を貪ろうとする人間の本能ではなく、ただ愛しいヒトを求める尽きることのない欲求。
『ぅ、ん……もっと、涼太』
『ハ、可愛すぎ……ンっ』
黄瀬の太い首に縋りながら、結はまるで身体のナカから全てを溶かすような灼熱の昂りに、その身を委ねた。
『結』
朦朧とする意識の下、自分の名前を呼ぶ優しい声に、結はうっすらと目を開けた。
『りょ、た』
『じっとしてて』
重なった唇から流れ込む水に、渇いた喉がコクリと鳴る。
『ん……』
『こっちおいで』
引き寄せられた腕の中、結はまだ激しく上下する胸から伝わる鼓動にそっと耳を寄せた。
ドクドクと全身に血液を送りこむ音すら愛しい。
『めずらしいっスね、そんな甘えて』
『甘えてなんか……』
言葉の代わりに胸に這わせた細い指に、落ち着きをなくした黄瀬の身体がモゾモゾと揺れる。
『これ以上オレを刺激しないで欲しいんスけど……ホント、どうなっても知らないよ』
髪を梳く指に耳朶をいじられて、くすぐったさに肩を竦めた瞬間、いつもとは違う鎖の輝きに気づき、結は目を見開いた。
『こ、れ……』
『あぁ。それ、結に似合うかなと思って。あのピアスも通しといたから安心して』
真新しいネックレスの存在に、頭を飛ぶのは疑問符ばかり。
『え、っと……なにゆえ?』
『ぷ。何スか、その返し。可愛い恋人にプレゼントすんのに、何か理由がいるんスか?』
『か、か、か……っ』
直球すぎる愛情表現に慣れる日が来るとはとても思えない。
言葉をなくし、パクパクと動かした唇が痛むのは、彼の情熱を受けとめたから。
なんて甘美で贅沢な痛み。
『前に言ったよね。結が身につけるものは、全部オレにプレゼントさせてって』