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【黒バス】今夜もアイシテル

第19章 カウントダウン



用意されたフカフカのクッションに、触れ合う腕から伝わる温もり。

結は、こみ上げる欠伸を必死で噛み殺した。

「あ!結、除夜の鐘っスよ!」

液晶の画面を震わせる荘厳な鐘の音が、この一年の出来事を鮮やかによみがらせながら胸に響く。

「今年も終わりですね……なんか、早かったな」

ポロリとこぼれた心の声に共感するように、伸びてきた腕が優しく肩を包み込む。

(幸せ……)

ひとつ、またひとつと繰り返される規則正しい心臓の音に、結は寄り添うように頭を預けた。





心地よい重みとぬくもりに、黄瀬はうっすらと唇をほころばせた。

「ホント、あっという間だったっスね。でも……」

(こうしてオレの隣に結がいて。それだけですげぇ幸せ)

日を追うごとに深まる彼女への恋心。

隣にちょこんと座る恋人に夢中な自分を、黄瀬は思いのほか気に入っていた。

「でも……なんですか?」

暖房の効いた部屋に、気持ちも緩んでいるのだろう。

言葉尻をとらえた彼女の声にいつものキレはなく。

口に手をあてて隠したつもりの欠伸も、目尻に光る涙のせいで完全にバレていることに気づいてはいないようだ。

「眠そっスね」

頭上からそっと囁く低音ボイスは、彼女のためだけの特別仕様。

だが、「やだ」と可愛い口から間髪入れずに発せられた拒絶の言葉に、黄瀬は目を丸くした。

「へ?オレ、まだなんも言ってないのに……いきなり否定って酷くないスか?」

「どうせ、眠かったら寝ていいんスよ〜とか言うんでしょ」





お互いの家を何度も行き来し、家族公認の関係を少しずつ築いてきたふたり。

年越しを同じ空間で迎えることが出来る幸せを、結は噛みしめていた。

『新年は、結とふたりっきりで迎えるんス!これだけは絶対に譲るつもりないから!』

何言ってんの!一緒にカウントダウンするに決まってるでしょ!と粘る母親を振り切って、部屋に連れていこうとする手が嬉しかったことは彼には内緒だ。

『イタズラしちゃ駄目だからね』と追い掛けてくる声に顔から火を吹きながら、ふたりで新しい年を迎えられる瞬間が待ち遠しくてたまらない。

(おめでとうって、絶対に先に言うんだから)

眠気を追い払おうと、結は自分の頬をペチペチと叩いた。





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