第18章 ホーリーナイト
「ふわ〜ぁ」
寒さに縮こまる背中を伸ばした拍子に、口から出た欠伸が視界を白く染める。
派手なイルミネーションが、目に眩しいだけのこの季節。
騒がしい音楽に浮かれる恋人達が街中に溢れて、歩きにくいことこの上ない。
(クリスマスイブなんて、今の俺には関係ねーし)
そう思いつつ、手を突っ込んだポケットの中、握りしめた携帯に何かを期待する自分が滑稽すぎて笑える。
いくらウィンターカップの最中とはいえ、電話くらいしてこいっつーんだよ。
「ハッ。馬鹿か……俺は」
こんな小さな画面越しの声なんかじゃ満足できるわけがない。
取り出したスマホに微かな温もりを感じながら、画面に親指をスライドさせて弾くようなタップを数回。
『今から行く』
いつもと同じ短いメッセージ。
カバンを肩にかけ直すと、俺は色鮮やかな街並みに背を向けた。
この角を曲がれば、アイツの家は目と鼻の先。
門扉の前をウロウロする小さな人影が目に入り、思わず緩む口許を手で覆い隠す。
いつ来るか分かんねーのに、ずっと待ってたのかよ。
「馬鹿なのは、お互い様ってことか」
淡い光を放つ街灯の下を通った瞬間、ぴたりと動きを止めた彼女の姿に、自然と広くなる歩幅がふたりの距離を埋めていく。
「さみぃ……」
冷気にぶるりと肩を竦めると、俺は温もりを求めるように走り出した。
I wish you a warm Christmas
with D.Aomine☆
end