第15章 リベンジ
「お……邪魔します」
身体にキッチリと巻いたタオルは、ささやかな抵抗の意思と最後の砦。
「ハハ、ちゃんと来た。いいコっスね」
黄瀬は既に頭からシャワーを浴びていた。
ふり向いた顔には濡れた前髪がペタリと貼りついて、いつもとは違う色気を醸し出している。
(なんでこんな無駄に色っぽいんだろ……)
女としては複雑な心境だ。
なんとか浴室に入ったものの、目のやり場に困った結は、くるりと彼に背中を向けた。
「ほ、本当にちょっとだけですからね」
「ハイハイ、分かってるって。ほら、結……こっち向いて」
「そそそそれはちょっと」
「タオル巻いてんのに、まだ恥ずかしいんスか?じゃ、このままで……っと」
「ひ、ゃっ!」
後ろから筋ばった腕に抱きすくめられて、口からこぼれた声がバスルームに反響して艶を増す。
「そんな声出しちゃって」
「う、もう恥ずかしくて……死にそうデス」
「なんで?もう結の身体は隅々まで攻略済みなんスよ。たとえば……」
耳のすぐそばで囁かれて、二の腕がざわりと粟立つ。
「あ、っん」
「耳がスゲー性感帯だって、知ってた?」
「っ、知ら……な、っ」
そのまま耳殻を熱い舌でなぞられて、否応なく跳ねる肩は言葉より饒舌で。
「ほらね、いい反応。で、ここも結の好きなトコ」
「あ、あぁ……っ」
耳朶を少しキツく噛まれて大きくのけ反る首筋を狙っていたかのように始まった唇の愛撫は、いつもより少し性急な気がした。
「ホント……敏感、っスね」
「ゃ……あ、っん」
絶え間なく頭上から降り注ぐシャワーの熱が、理性を少しずつ溶かしていく。
「……結」
「黄瀬さ……ん、アぁっ」
うなじに、肩にと吸いついてくる唇に壁まで追いつめられて、ひやりと肌を刺すタイルの感触と、背中を滑る愛撫の温度差に、ガクガクと足が震える。
「ぁ、あっ……ゃ、ん」
「白い肌、ホント綺麗……」
シャワーより熱い愛撫を浴びながら、結はふらつく身体を支えてくれるたくましい腕に、自分の手をそっと重ねた。