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【黒バス】今夜もアイシテル

第15章 リベンジ



待ち合わせの場所は、予想に違わず黒山の人だかりだった。

「ねぇねぇリョータ!一緒に写真撮って!」
「私も!腕組んでもいい!?」

「えっと……ホント悪いんスけど、オレ彼女いるから、あんまそーいうのは」

「ちょっと!押さないでよ!」
「押してるのはアンタでしょ!」

人気モデルに群がる女子のテンションは、いつもより明らかに高めで、白い湯気が立ちこめているのは、目の錯覚ではなさそうだ。

「なんか、いつも以上に凄いかも……」

あそこに突撃出来るのは、ゲームの中の“勇者”くらいのものだろう。

(どうしようかな。とりあえず着いたって連絡だけ)

手に提げた巾着袋のなかの携帯を探していると「ひっとり〜?」と背後から耳に落ちる軽薄な声から、結はとっさに距離を取った。

ゆっくりと振り返ると、そこには片方の口角を上げて微笑むプリン頭の男がひとり。

肩に触れてくる下心見え見えの手から、結はさりげなく離れたが、男は懲りもせず距離を縮めるようににじり寄ってくる。

「ふたりです」

「お友達と待ち合わせ〜?じゃあさ、オレがいっしょに待っててあげよっか」

ね?と顔を寄せてくる男に、ぞわりと背中を震わせたその時。

「ぅ、わっ」

男から引き離すように、腕を引かれてバランスを崩した結の身体は、たくましい胸に抱きとめられていた。

よく知った香りに、迷わず縋りつく。

近くから聞こえる悲鳴の正体は、おそらく羨望と嫉妬の声だろう。

「オレの彼女に何か用?」

「っ!えっ、ぇえーー?マ、マジ……かよ」

「結。お待たせ」

あたかも周囲に見せつけるように、黄瀬は腕の中の身体を胸に深く抱き込んだ。

その優しい声とは対称的に、怒りに満ちた鋭い視線に射貫かれた男は、尻尾を巻いて逃げていった。

「だいじょーぶ?ゴメンね、来るのが遅くなって……てか、気をつけなきゃダメじゃないスか」

ホッとしたように息を吐きながらも「よくナンパとかされんの?」と不機嫌そうな声に、結は眉を顰めた。

「黄瀬さんに……」

黄瀬さんに言われたくないです、といつものように皮肉めいた言葉は何故か出てこない。

「何?結、どうしたんスか?」

『リョータ』と呼ぶ女子の声が、耳の奥でこだまする。

(そっか、これが……)




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