LAUFEN ODER STERBEN(進撃:エレン夢)
第1章 LAUFEN ODER STERBEN
馬達がゆっくりと休息できる野原とは違い、鉄パイプで囲われたアリーナ内では脱糞を許されない。馬の数が多い分、掃除が大変なのも理由の一つだが、実際は馬糞を肥料として有効活用するための政策だ。
野原での脱糞は、その場の草木に栄養を与える。そして馬小屋内で集められた糞は、生産者側に肥料として発送される。けれど広いアリーナ内では糞を集めるのは困難であり、何より非生産的だ。砂にいくら栄養を送ろうとも、何かが生える訳ではないし、むしろ雑草が生え始めれば直ぐさま除草される。
だからレイと言う少女は馬達にアリーナ内での脱糞をしないよう教育してた。もし砂上に糞を見つけたら彼女はピッチフォークで糞を掬い上げ、思いっきり体のバネを利用してフォークを横にスイングし、糞を馬達に投げつける。もちろん「コォラァアアア!!」と雄叫びを放つのも忘れない。
今でこそネス班長に質問をし、彼女の行動の意味を理解したエルドだったが、初めて見かけた時は笑えないくらい恐ろしい子だと感じていた。それを聞いたエレンも少女に対して乱暴な印象を持ち、引いてしまう。ペトラも目を丸くしているのを見る限り、初耳の話しらしい。
エルドはびっくりする二人を面白そうに見た。けれど、ふと何かを思い出したのか、彼はもう一つ少女に従いたくない理由を付け加える。
「ああ、そうそう。あの子、そういえば壁外には出ないらしい。馬の世話が忙しいっつてな」
エレンは驚愕した。
調査兵団に所属する以上、五体満足の人間は必ず壁外で出向くものだと教わっていたからだ。確かに兵士の中には調査に同行しない人間もいる。しかし彼らは多くの場合、過去の壁外調査で負傷した者達だ。かつては外で活躍していたが、怪我の所為で止むを得ず壁内での活動を行っている人々である。