LAUFEN ODER STERBEN(進撃:エレン夢)
第1章 LAUFEN ODER STERBEN
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「確かにあの子は変わり者だよね。確かレイって名前の子じゃなかったかしら?」
肉っ気のない、ジャガイモと粗末な野菜が中心に入っているスープを夕食にしながら、エレンは同じリヴァイ班のペトラ・ラルとエルド・ジンと共に席に着いた。他のリヴァイ班はそれぞれの任務やら訓練やらから戻っていないのか、野外での食事は三人で先に行われる。その際、ナチュラルに監視をしたいのか、それとも本当にエレンと仲良くなりたいのかは定かでないが、ペトラとエルドはエレンに「今日はどうだった?」と当たり障りのない話題を振った。
つい先ほどの出来事だったのもあり、エレンは奇妙な東洋人との出会いの話をする。やはり見た目からして珍しい人物だからか、ペトラとエルドは瞬時に誰の事だかを察したようだ。そしてどうやら彼らにも東洋人の少女に対して思うところがあるらしい。
「確かに性格はキツいって聞いた事あるよ。でも彼女の言う事は聞いた方が良いと思うの。少なからず、馬に関しては彼女以上に詳しい人はいないらしいから」
「俺は嫌だな。ずっと前の事だが……馬をまた訓練のために出し入れするから、通路の泥を適当に掃除してたのが見つかって、えらいガミガミと説教された事がある。馬の事を習うなら、ネス班長の方が良い!」
「それはエルドが悪いんでしょう? 手抜きはダメだって」
レイ、と言う少女はやはり馬に関しては厳しいらしい。温かいスープを少しずつ口にしながら、エレンは二人の会話を聞いていた。「専門分野に関して厳しい」の点では、どこかリヴァイを彷彿とさせるものがある。
しかしペトラとエレンは少女の本性を知らないとばかりに、いやいや、とエルドは首を振る。
「それだけじゃない。実はこの前、あの子が怒りながら外の馬に向かって馬糞を投げつけてるのも見たんだ」
一瞬、何を言ったのか理解に遅れたが、脳内で想像し終えたエレンは驚愕した。
「馬糞を!?」
「恐ろしい形相してたぞ?」
予想以上のリアクションを返したエレンに満足しながら、エルドは大笑いをする。詳しく話しを聞くと、どうやら少し前に偶然見かけた光景らしい。砂で地面が敷き詰められた馬の運動場、通称アリーナでの出来事だった。