LAUFEN ODER STERBEN(進撃:エレン夢)
第1章 LAUFEN ODER STERBEN
交互に馬と息を吐き、互いの呼吸を感じ合う。状況の理解が追いつけないが、女からは何も言われないのを見て、一応やり方はこれで良いのだと解釈する。しかし、襟を握られる感覚は一切ゆるまず、まだまだ続けろと無言で脅されているようでもある。それに伴い、この呼吸の行為がいつ終わるのか不安になり始めたが、そんなエレンの思考を読み取ったかのように、自然と馬の方から離れて餌を食べ始めた。
「今のが馬の挨拶よ。次からはちゃんと返す事ね」
もそもそと干し草を食し始めたのを確認したからか、エレンの首裏の緊張感がやっと解れる。そして心なしか、女の声も少し柔らかくなったような気がした。
一体どんな女性なのか。今までエレンの動きを拘束していた正体を知るため、後ろを振り向く。しかし振り向いた先にいた女性……いや、自分とそう年の変わらない少女に彼は驚いた。まず、年がそう変わらないのも予想外ではあったが、何よりも彼女の風貌に目を見開く。日焼けとは違う飴色じみた肌、そして比較的に平たい顔の作り。どことなくミカサに似ていたのだ。
細かい表情や顔のパーツはミカサと異なる部分が多いものの、人種は近いのだろうか。壁内ではなかなかお目にかかれない、けれどエレンにとっては親しみのある容姿だ。けれどそれ以上の観察をする前に、少女はエレンと同じく羽織っている自由の翼を翻しながら踵を返して立ち去った。そして言うだけ言って自己紹介もせずに歩いて行く彼女を不審に思いながらも、エレンも後に続くように馬小屋を去っていく。