第4章 東峰旭
「あ、旭!危ない!!」
放課後になり澤村、菅原、清水、そして彼女である沙奈と部活のため一緒に体育館に向かっているときだった。
新垣が急に叫んだものだから皆が東峰をみた。
そして何かから守ろうとしているのか懸命に手を伸ばすのが東峰にはスローモーションで見えた。
…そう、スローモーションで。
堪らず後ろを振り返ると迫りくるボール。
と同時に沙奈がつまづいたのか、あっ、と声をあげたので咄嗟に助けようとした。
…が。
「旭!ボール!!」
菅原の言葉によって ついついボールを見てしまったが沙奈も助けたいという気持ちから中途半端な姿なのがいけなかった。
「ふぐっ!!!」
見事顔面に命中。
涙目のままバッと勢いよくさっきの方をみると大地に支えてもらったのか転ぶことはなかった。
支えてもらった体勢のまま近すぎる距離で微笑みながらお礼を言っていた。
ボールを拾いながらその光景を見ながら、転けてケガをしなくて良かったと安心する。
「げっ、まじかよ。あ、すいませーん!大丈夫ですかー?ボールあたっちゃっ…」
ゆるりとした呑気な声が聞こえてきた。
きっと2年生であろうサッカー部のひとは駆け寄ってきたが東峰の顔をみて固まう。
「す、スミマセンしたあああアアアァァァァッ」
素速い動きで東峰の手からボールをとり、ダッシュで引き返してしまったではないか。
「………え?」
困惑しながらサッカー部の人が走り去った方をみる東峰。
その他 4人は静かに肩を震わせながら何かに耐えている。
「ぷっ!もうだめ、耐えられないっ」
新垣が吹き出して笑ったのを境に澤村も菅原も、あろうことかあの清水さえ声に出して笑いだした。
「だからお前は ひげちょこなんだよ!」とよくわからない言葉に戸惑いながら旭はただただ逃げられた事によるショックで暫く固まっていた。