第3章 ペリドットの癒し
どうにも心を揺さぶられて、仕事どころではない。
ルヴァイドは目の前にそびえ立つ崖に足を止めて、辺りを見渡した。
「アレス、どこだ?」
崖の際までは生えていない木々。だが当然均された道などなく鬱蒼としている。
彼女から貰った緑色の小石を握り締めて、ルヴァイドは祈った。
頼むから怪我などしていないでくれ。
「アレス、聞こえたら返事をしろ」
声に焦りが表れないように自制するルヴァイド。
アレスを心配して歩く彼の耳に、僅かな気配が届いた。
「アレス…?」
気配がした木の影を見やれば、その木を背にして眠りこけているアレスを見つけた。
安心を通り越して思わず脱力する。
人の気も知らずに居眠りとは、呑気なものだ。