第1章 カルセドニーの導き
「それは立派な村おこしですね」
アレスが思った事を率直に漏らせば、ロッカは顔を僅かに俯かせた。その様子を、アレスは不思議そうに見つめる。
「あなたはそれを喜ばしく思っていないのですね?」
「あ…すみません。そういう訳じゃないんですが…」
ロッカは困ったように肩を竦めて、小さく頬を掻いた。
「聖女は僕の身内なので…これだけの人数に無理してないか、心配なんです」
「まぁ、そうでしたか。それは当然ですね。心中お察しします」
アレスは同情を含ませて相槌を打つ。ロッカはそんな彼女に小さく微笑んだ。
「話は変わりますが、現在宿は取れますか?」
村に溢れ変える人の群れを見やり、ダメ元で尋ねる。
「今はどこもいっぱいで…」
「ですよね」
アレスはふぅと溜め息を吐いた。