第1章 カルセドニーの導き
「では、貴女はどうしてこの村へいらっしゃったんです?」
青年は物腰がとても柔らかく、その落ち着いた雰囲気はこれだけ人の溢れた喧騒の中でも彼の周りだけ隔離されているかのように錯覚させた。
「私はリィンバウムの地質を調査して回ってる者で、アレスと申します」
サモナイト石生成のことは利権が絡んでややこしくなるので、ここではそれを伏せてアレスは自らを名乗った。
「学者さんでしたか。僕はこのレルム村の自警団長、ロッカです」
「ロッカさん、聖女についてお伺いしても良いでしょうか」
聖女と、この村が賑わうその理由を知りたいと尋ねれば、ロッカは複雑な笑みを浮かべながら口を開いた。
「どんな怪我や病気でも癒す聖女の力を求めて、大勢の方がこの村にお越し下さっています」