第1章 カルセドニーの導き
数分後、レルムの村にたどり着いたアレスの目に飛び込んで来たのは人・人・人。
大人から老人、子供までが村のキャパを越えそうな勢いで行列を成している。
本来長閑であろう小さな村には不釣り合いなその状況に、アレスは言葉を失った。
「列の最後尾はコチラでーす!」
呆然と突っ立つアレスに向かって、一人の青年が声をかけてきた。彼女を、村の“あるもの”を目当てに来た客だと勘違いしたのである。
声のした方に顔を向けると、手を振って列に誘導しようとする青年。その彼に、アレスは早足で歩みよった。
「ちょっとお尋ねしますが、何なんです?この行列は」
「あれ、貴女は聖女目当てではないんですか?」
青い前髪に茶色い後ろ髪という不思議な髪形の青年は、きょとんとした表情を見せた。