第2章 ターコイズの守護
アレスは心底嫌そうに半眼で彼を睨み付けた。
「…命は助けてくれる約束だったでしょう?」
「そうだな。だが、逃がすとは言っていない」
その言葉に、アレスの表情が思い切り引き吊った。
一瞬の判断でリュックを捨てて逃げようとしたが、それを見越していたかのように黒騎士がアレスの腕を捻り上げる。
「痛いっ!!止めて、離して!!」
「落ち着け」
「乱暴しないでっ!!」
戦場で女が捕まれば、興奮した兵士の慰み物になると相場が決まっている。
戦闘時の顔付きとはまるで違うアレスの怯えた表情に、黒騎士は拘束する力を弱めてやった。
「悪いようにはしない。お前は聖女一行と顔馴染みのようだからな」
「……人質にあたる程の価値は、私には無いわよ」
だって今日出会ったばかりなんだから。