第2章 ターコイズの守護
撒き散らされた水飛沫によって上がる水蒸気を見つめるアレスは、やや間を置いて黒騎士に向き直った。
「……お礼を言うのも何だけど」
危ない所を助けてくれありがとう。
「……興醒めだな」
黒騎士は兜越しにも聞こえる程の溜め息を吐いて、剣を納めた。
その様子に、アレスは心の底から安堵した。
「その石、貴方にあげるわ」
ペリドットは暗闇に希望をもたらす石だから。
「貴方にも加護があると良いわね」
そう言って荷物を背負い直す。
ロッカ達の逃亡時間はもう十分に稼げただろう。早々にこの場を引き上げた方が良さそうだ。
アレスは水浸しの地面に一歩踏み出した。
…が、それを阻む力が彼女の進行を阻止する。
「どこへ行くつもりだ」
リュックを掴むのは黒騎士の右腕。