第2章 ターコイズの守護
そういう交換条件ならと、アレスは黒騎士の手を振り払って自立すると杖を握り直す。
「これ、持ってて」
ペリドットの丸玉を黒騎士に放った。
受け取った小さな石ころを握り締め、黒騎士は召喚術の詠唱を始めたアレスの横顔をじっと見つめる。
意思の強そうな眉に、通った鼻筋が召喚術の光に照らされる。
ふっくらとした唇が詠唱を口ずさみ、長い睫毛が揺れる。
召喚術の発動を合図するように紫の双眸が見開かれ、長い髪が風で舞い上がった。
「出でよ、ローレライ!」
声高に響く声に喚ばれて、緑色の召喚光の中から人魚の姿をした召喚獣が現れた。
「消火をお願い」
アレスが短く指示すれば、ローレライは承知したと頷き、何処からともなく水流を迸らせる。
周囲の炎は呆気なく鎮火した。