第1章 カルセドニーの導き
長い茶毛と、マキシ丈のスカートがアレスの歩幅に合わせて揺れる。
彼女は手に金色の杖を持ち、背中に大きなリュックを担いでいた。
地面を淡々と見つめていたアメジスト色の瞳が、ふと山道の先を見やって細まった。
「この先は、レルムの村か…」
ぽつりと溢す。
アレスは今まで歩いてきた道のりと、レルムの村の事前情報と比較して首を傾げた。
「行商の人間によれば小さな村のはず…だけど、この村道にはたくさんの足跡が付いてるわね…」
アレスは一度足を止めて、今来た道を振り返る。
小さな村の村道の割りには、綺麗に整備された道。
その道には真新しい足跡でも、10人ほどの足跡が村の方向へ向かって延びていた。
しかも全てが一方通行なのである。
「何かお祭りでもあるのかしら」