第9章 ラブラドライトの叡智
アレスは、露わになっているルヴァイドの肌をじっと見つめていた。
血がこびり付いていても分かる、隆々とした筋肉。指先から伝わる熱に、ルヴァイドの生を実感して。
「……はぁ」
溜め息を吐くと、大きな背中に寄り添いうなだれる。
大勢の命が無惨に散った中、愛しい人は生き残ってくれた。本来ならば、こんな事を言うのは非常識なのであろうが…
「ルヴァイドが生きててくれて、良かった…」
彼の生をもっと感じたくて、そっと腕を回して抱き締める。
現状は決して良しとは言えないが、ルヴァイドの生が絶たれなかった状況に感謝するしかない。
「助けてくれてありがとう」
バルレル、と呼び掛けて腕の力を強めれば、ルヴァイドの体で疲れたように悪魔は息を吐き出した。
「…お前、少し休め」
精神と魔力を消耗して、今にも倒れそうなのはアレスの方だ。
「コイツの体は、しばらく俺様が面倒見てやるからよ」
だから心配しないで横になれと、ぶっきらぼうにバルレルは言う。