第9章 ラブラドライトの叡智
「何で悪魔の俺様が天使の加護を受けなきゃなんねーんただよ。テメェも回復系なら使えたろうが、テメェがやれよ」
「だ、だって私が喚ぶ子は回復専門じゃないから…」
バルレルの殺気立つ様子に、どうしてそこまで毛嫌いするのかとアレスは不思議に思う。
しかしこれ以上バルレルの機嫌を損ねてルヴァイドを見捨てられても困るので、アレスは大人しく従った。
ポケットからローレライに呼び掛ける石を取り出す。
「……あれ」
ルヴァイドの傷を目視して、驚いた。
「傷が塞がってる…」
「だから必要ねぇって言ったろ…」
疲れたようにうなだれるバルレルに、アレスは申し訳なく頭を下げた。
「ご、ごめんなさい…じゃあ、せめて包帯だけでも…」
そう言って、指でそっと傷跡に触れる。
その瞬間、アレスの背筋がざわりと粟立った。
「──どうした?」
急に黙り込んだアレスに、バルレルが怪訝な表情で振り返った。