第9章 ラブラドライトの叡智
レイムとの攻防で荒れ果てた駐屯地のはずれに、唯一残ったテント。もしかしたら中に生存者が居るのではないかと、そっと入り口を開けたアレスはすぐに落胆する事になる。
「…あ、中にベッドがあるわよ」
よく見れば所々に放置されている薬品の類や包帯の数々。ここは医務所として使われていたらしい。
「バルレル、中に入って。ルヴァイドの傷の手当てをしなきゃ」
「別に必要ねーよ」
「バルレルには必要無いかも知れないけど、その体はルヴァイドのものなんだから!早く上脱いで、傷見せて」
アレスの必死な様子に溜め息を一つ吐き、バルレルはベッドに腰掛ける。そして上着を脱ぎ、アンダーシャツも脱ぎ捨てた。大量の血を吸収した服が、地面に落ちてビシャリと音をたてる。
「ここにはサプレスのサモナイト石は無いのかしら?」
「そんなモン探してどうするんだ?」
「バルレルが召喚術で高位の天使を喚び出したら、傷も癒えると思って」
ゴソゴソと引き出しを漁るアレスの背中に、バルレルは眉を顰めた。