第9章 ラブラドライトの叡智
二人を殺さんとする銀髪の男を弾き飛ばし、アレスに向き直るとまるで信じられないと言うように眼を見開いていて。
『大丈夫かっ、アレス?』
「──大丈夫かよ、アレス?」
しかしルヴァイドの身に起こった変化にすぐに気付くと、美人なはずの顔をくしゃくしゃに歪めて飛びついてきた。
「──バルレル!助けに来てくれたのね!」
優しくその身体を抱き留めてやったルヴァイドの魂が、ズキリと痛む。
しかしバルレルはそんなルヴァイドを無視して、ゆらりと立ち上がった男を睨み付ける。
長い絹のような髪を靡かせる優男は、バルレルの威圧を物ともせず睨み返してきた。そして馬鹿にしたように薄く笑う。
「大の人間嫌いと噂される悪魔が人間の皮を被るなど、どうした風の吹き回しでしょう」
目の前の男は、ルヴァイドに宿った悪魔の魂に語りかける。
バルレルも、宿主の体に致命傷を与えた武器の存在を思い出し、男の【中身】に見当を付けていた。