第9章 ラブラドライトの叡智
『アレスの周りには、つくづく変わり者ばかり集まりやがるな。ここにも悪魔を恐れない馬鹿がいたとは』
「アレスを知っているのか」
『知ってるも何も──』
アイツは俺様の下僕だ。
そう言って、燃えるような緋色の髪を掻き上げながら悪魔は笑う。
『アイツは俺の所有物だから、テメェにくれてやる義理はねぇな』
「……なんだとっ!」
『まぁまぁ、そんなにいきり立つんじゃねーよ』
拳を握り締め、今にも殴りかかってきそうなルヴァイドを、バルレルは笑いながら宥める。コイツ、本当に死に損ないかよと。
『俺がここに来たのは……アレスを助けるためだ。可愛い下僕がお前の死を悲しんで泣いてりゃ、一肌脱いでやらなきゃいけないだろ』
「貴様…何を言っている…?」
困惑するルヴァイドの胸倉を掴み上げ手て、今度はバルレルが押し倒した。
『テメェの体を俺に寄越せ』
額にある第三の瞳がついと細まった。