第9章 ラブラドライトの叡智
『!?テメッ、ニンゲンの癖に俺様に何しやがる!?』
「──俺はまだ死ぬわけにはいかぬ!死神よ、まだ俺を連れて行くな!」
ぼやける視界の中で姿を現したのは、とても人間とは言い難い、魔性の姿をした若者。
ルヴァイドは必死の形相で、目の前の存在を倒しては抑え込んだ。
「…最後に一言…アレスに謝るまでは…」
死んでも死に切れぬと、ルヴァイドの目尻から涙が零れた。
『………俺は、死神じゃねぇ』
声のトーンを落として言う青年は、品定めをするようにルヴァイドの魂を睨め付けると、その体を力づくで押し返す。
「死神でなければ、何者だ」
『悪魔だ』
人間のルヴァイドからしてみれば、然したる違いはない存在に向けるその眼光。悪魔と言っても怯まないその鋭さに、精神だけの姿となったバルレルは苦笑を漏らした。