第8章 セレスタイトの歌声
「ケッ、反吐が出そうだぜ」
本心から嫌気がさすのか、苦々しい表情になったバルレルにアレスはようやく笑みを浮かべた。
「…話は分かった。では、ルヴァイド様の精神が戻るまでよろしく頼むぞ」
「口は悪いけど、バルレルは良い悪魔だから」
「良い悪魔って、何だよソレ」
辟易するバルレルの様子が、ルヴァイドの堅苦しいイメージを崩していく。だがそれが逆に人間らしくて、イオスも小さく微笑んだ。
「コレカラ、ドウスル?」
空気が落ち着いた所で、ゼルフィルドが音声を発する。
イオスは唇を一度強く噛み締めると、弱々しく言葉を紡いだ。
「…デグレアには戻れないな…」
自分達は国から捨てられた。そもそも元老院はレイムの皮を被ったメルギトスに食い荒らされていたのだ。
この事実をルヴァイドが知ったら、どんなに心乱れる事だろうと──部下たちの亡骸から目を逸らして顔を伏せるイオス。