第8章 セレスタイトの歌声
「…とりあえず、ファナンにある私の家に帰ろうと思う」
レイムの言った言葉の手掛かりが、自宅の書棚に残されているかも知れない。
「ゼルフィルドの修理も必要だし、一度体を落ち着けましょう。それからアメル達と合流して、メルギトスとの戦いに備えなくちゃ」
「…僕達は聖女を傷つけた。受け入れられるはずが…」
「大丈夫よ」
アレスが、イオスの肩に手を置いて笑う。
「皆いい子達だから。ね?バルレル」
「…あ?あぁ、そうだな。お人好しって言葉がピッタリだ」
ぼんやりと死体を見つめていたバルレルが、アレスの言葉に同意して頷いた。その目線を辿ってそっと血だまりを見たアレスは、笑みを消してイオスの手を握る。
「…その前に、弔ってあげなきゃね」
一緒に過ごした時間は僅かだったが、彼らの死が酷く悲しい。
「…僕らがやるよ。君はルヴァイド様の身体を休ませてあげてくれ」
イオスは僅かに震えるアレスの手を握り返すと、寂しそうに微笑んだのだった──。
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