第8章 セレスタイトの歌声
その体の本来の魂は今どうしているんだと、言外に問い掛ける。
「結論から言うと、俺が憑依状態を解けばコイツは死ぬ」
バルレルの言葉に、アレスとイオスは息を呑んだ。
「死の淵で生にしがみつこうとするその執念にゃあ、感服したぜ」
このままでは死ねないと、ルヴァイドは瀕死の状態にありながらバルレルをその身体に引きずり込んだのだ。
本来取引を伴うその契約を、悪魔の意志を無視して人間が力づくで行うことなど前代未聞だ。
「俺が憑依してるからこそ生き長らえてるだけであって、本当なら死んでんだよコイツは」
トントンと、その体の胸を叩くバルレル。
アレスはポロポロと泣きながら、再度問い掛けた。
「…じゃあルヴァイドは…戻って来ないの…?」
サプレスを思い起こさせる色の瞳が不安に揺れる。バルレルは頬を流れる涙を拭い去ってやりながら、困ったような表情を作って見せた。