第8章 セレスタイトの歌声
「どういう訳だか、ルヴァイドの身体に憑依してるみたい」
「オイオイ、あんまりな言い方じゃねぇか。俺様は、テメェが助けを求めてたから来てやったってーのに」
そう言われて、きょとんとするアレス。
ルヴァイドの姿をしたバルレルは、彼女に近付いて無遠慮にその胸元に手を突っ込むと、餞別に渡した結晶を取り出した。
「これは俺の魔力の塊だからな。これがテメェの思念を媒介して俺を喚んだワケだ」
「…私、確かに思ったわ」
誰でも良いから助けて、って…
「滑稽だったぜ。崩れながらタスケテタスケテって泣いててよ」
笑いながら、乱暴にアレスの体を突き放す。
「悪魔は本来形を持たない思念体だからな、軸となる物があれば瞬間的に移動も出来るし、憑依も出来る」
「…理論ニ破綻ハ無イナ」
黙って話を聞くイオスの傍らで、機械兵士のゼルフィルドが超常現象を理解して頷いている。
イオスはと言えば、未だ不振そうにルヴァイド姿の悪魔を見やっていて。
「…ルヴァイド様は?」