第8章 セレスタイトの歌声
ルヴァイドは掴み上げた腕を交差させ、レイムの軸を歪めると、腹部に体重を乗せた蹴りをかました。あっけなく吹っ飛んだ男に、彼は肩を竦めてアレスへと振り向く。
「……大丈夫かよ、アレス?」
目を細めて笑うその顔は、間違いなくルヴァイドで。
しかし、その目は人間の瞳孔とは違い細長くて──目元に火蜥蜴のような刺青が走っていた。
「ルヴァイド様…ではない?一体何がどうなって…」
混乱するイオスは、出で立ちは同じでも雰囲気が全く違う上司の姿に目を白黒させるしかない。
となりのアレスは、目の前に立つ男の〖中身〗に気がついて、嬉しさのあまりその者に飛びついた。
「──バルレルッ!助けに来てくれたのね…っ!!」
名を呼ばれたバルレルは、そっと柔らかいその体を受け止めてやった。
「不本意だがな……しかしまぁ、えらいピンチな状況に陥りやがって」
この始末はどうつけるか、と視線を例の男に這わす。
するとレイムは重い蹴りのダメージなど無かったかのように立ち上がり、服の裾に付いた砂を払っていた。