第8章 セレスタイトの歌声
「──さようなら、哀れなまでに無知な娘よ」
レイムのその腕が高く上がり、勢いよく振り下ろされた瞬間。
イオスはアレスを掻き抱いて、衝撃に耐えようと身を堅くする──しかしいつまで経っても苦痛は来なかった。
何が起こったのかと、片目を開いて状況を伺えば…
「…な…っ」
レイムの腕を掴み上げ、そいつの華奢な体を地面から浮かす赤髪の男がそこにいた。
「あぁ…」
「ルヴァイド様!?」
ふわりと髪を靡かせながらアレスとイオスを庇い立ったのは、絶命したであろうルヴァイドだった。
「この死に損ないが…っ!」
ここにきて、初めてレイムの顔色が変わる。
アレスからではルヴァイドの表情を見ることが出来ない。
しかし、戻ってきた理性が、あれだけの出血で立ち上がる事は不可能だとアレスに告げていた。
(夢を…見ているの?)